広島県の南、瀬戸内海に浮かぶ江田島市は、温暖な気候と美しい海に囲まれた静かな町。
広島市内から約1時間半ほどで到着することができます。
そんな江田島には、日本の防衛の未来を担う海上自衛隊幹部候補生学校があります。
この場所は、旧日本海軍の海軍兵学校としても知られ、明治期から現在まで多くの幹部を育ててきた、まさに「軍事エリートの登竜門」といえる存在です。
見学を通じて、現在の自衛隊がどのように教育・訓練を行っているのかを知ることができると聞き、休みを利用して現地へ足を運びました。
■ 【2025年最新|小用港経由】広島駅から江田島・幹部候補生学校(旧海軍兵学校)への行き方

広島駅から江田島の海上自衛隊幹部候補生学校(旧海軍兵学校)へは、路面電車(広電)+高速船+バスでアクセスできます。
約1時間30分ほどで到着する、日帰り見学にも適したルートです。
① 広島駅から広島港(宇品港)へ【広島電鉄:路面電車】
▼ 広電5号線でのアクセス方法(所要:約35分)
- 出発:広島駅南口の路面電車乗り場
- 路線:5号線 広島港(宇品)行き(広島駅~比治山下~広島港)
- 降車:終点「広島港(宇品港)」
広島駅発の1号線 広島港(宇品)行き(広島駅~紙屋町東~広島港)でも広島港(宇品)まで行くことは可能ですが、所要時間が10分程多くかかってしまいますので注意しましょう!
▶運賃
- 大人:240円(全線均一)
- 小児:120円(10円未満切り上げ)
- 幼児:大人1人につき幼児3人まで無料
▶ICカード/現金どちらも利用可能
▶詳細:広島電鉄 公式サイト
全国相互利用が可能な交通系ICカードをご利用の場合、乗務員のいる扉から降車し端末にタッチして清算してください。(乗車時タッチの必要はありません)
② 広島港から江田島・小用港へ【高速船】

- 広島港フェリーターミナルから瀬戸内シーラインの高速船(小用港行き)に乗船
- 所要時間:約30分
- 運賃:大人1,080円(片道)
▶高速船の時刻表・詳細はこちら:瀬戸内シーライン公式サイト
▶広島港(宇品)の場所:Googleマップで見る

高速船は1時間に1本と本数が限られているため、利用の際は出発時刻に十分注意しましょう!
③ 小用港から幹部候補生学校へ
▼バス(おすすめ)
- 江田島バス:小用から第1術科学校前まで
- 所要時間:約10分
- 料金:150円
バス停は小用港ターミナル前。高速船の発着時間と合わせてバスが運行しています。
▼徒歩(健脚向け)
- 小用港から徒歩:約30分
- 坂道が多く、荷物がある場合はタクシー推奨
▶幹部候補生学校の所在地:Googleマップで開く
所要時間まとめ(広島駅 → 幹部候補生学校)
区間 | 移動手段 | 所要時間 |
---|---|---|
広島駅 → 広島港(宇品) | 路面電車(5号線) | 約35分 |
広島港(宇品) → 小用港 | 高速船 | 約30分 |
小用港 → 第一術科学校 | バス | 約10分 |
合計 | – | 約1時間30分 |

広島駅から海上自衛隊幹部候補生学校(第一術科学校)まで、乗り継ぎ時間を含め約1時間30分で到着することができます!
🔗 関連リンクまとめ
■ 幹部候補生学校とは?|エリート自衛官の育成現場

江田島にある海上自衛隊幹部候補生学校は、海上自衛隊の中でも特に重要な教育機関です。
ここでは、海上自衛官としてすでに任官している者や防衛大学校・一般大学を卒業した者などが、幹部自衛官(=指揮官)となるための最終的な教育を受けています。
訓練内容は非常に厳しく、規律、体力、知識、リーダーシップ、精神力すべてを高いレベルで求められます。
候補生たちは約1年間、ほぼ毎日早朝から夜まで分刻みのスケジュールで動いています。
ここで育った幹部たちは、卒業後すぐに遠洋航海に出て、実際の海上任務を経験します。そのため、「日本の海を守る」エリートたちの原点ともいえる場所なのです。
■ 見学について|申し込み方法と注意点

江田島の幹部候補生学校自体は教育施設のため、構内すべてを自由に見学することはできませんが、隣接する海上自衛隊第1術科学校(旧海軍兵学校の施設)では、一般向けの見学ツアーが実施されています。
▶見学方法の基本

- 見学実施日:基本的に年中無休(年末年始などを除く)
- 受付時間:見学開始30分前から、正門で受付
- 参加費:無料(ガイド付き)
- 予約:個人での参加は予約不要。団体(50人以上)は要事前申請

個人での参加は予約不要ですが、事前に海上自衛隊第1術科学校公式ホームページで見学可能日に変更がないか確認しましょう!
▶開催日時
平日(見学は1日3回)
回次 | 見学時間 |
---|---|
第1回 | 11:15~12:45 |
第2回 | 13:30~15:00 |
第3回 | 15:15~16:45 |
土日祝日(見学は1日4回)
回次 | 見学時間 |
---|---|
第1回 | 09:30~11:00 |
第2回 | 11:15~12:45 |
第3回 | 13:30~15:00 |
第4回 | 15:15~16:45 |

約90分のツアーです。
レクレーションセンターに集合後、見学の際の説明がありガイドと一緒に施設見学へ出発します。
見学時のお願い事項(海上自衛隊幹部候補生学校)
幹部候補生学校(旧海軍兵学校)は、観光施設ではなく現役の教育機関(海上自衛隊第1術科学校)です。
安全確保と訓練環境の維持のため、見学される方は以下の事項を必ず守る必要がありますので、しっかりと確認して参加するようにしましょう!
見学マナー・行動に関するお願い
- 案内人(ガイド)の指示に従うこと(飲酒状態での見学は×)
- 見学途中の退場は原則不可
- 教育参考館内での撮影は禁止
- ペット(犬・猫等)の同伴は不可(※介助犬を除く)
- 垂れ幕・ビラ等の配布、署名活動や政治活動は禁止
- 危険物(酒類・油脂類・ナイフ・火薬等)の持ち込みは禁止
- 大講堂で儀式等が行われている場合、内部見学はできません
車両・服装・天候への対応について
- 車両は正門の係員の指示に従って、無料の一般駐車場をご利用ください。
(※大型バスも駐車可能) - 約1.5kmの徒歩移動を伴うため、歩きやすい靴でお越しください。
ヒールや金属付きの靴はご遠慮ください。
雨天時は、レインコート・傘等の雨具をご用意ください。 - 教育機関にふさわしい服装での見学をお願いします。
タンクトップ、短パン、サンダルなどはご遠慮ください。 - 都合により見学を中止する場合があります。
事前に最新情報をご確認ください。

見学中は教育の妨げにならないよう配慮が必要です。
サンダルや短パンなどの軽装は不可。
写真撮影は許可されたエリアのみ可能で、教育参考館の内部などは撮影禁止です。
▶課業整列(かぎょうせいれつ)の見学も可能
朝の「課業整列」は、自衛官の日常訓練の中でも特に印象的なものです。
隊列を組んで点呼・国旗掲揚・講話・服装点検などを行い、部隊としての一体感を養う行事となっています。
この「課業整列」は、江田島市商工観光課を通じて事前申し込みをすれば見学可能です。
見学可能日や集合時間などは市の公式ページで確認できます。
■ 大講堂(第一術科学校 大講堂)|歴史と格式を感じる海自の式典ホール

江田島にある海上自衛隊幹部候補生学校(旧海軍兵学校)の見学で、特に圧巻なのが「大講堂」です。
正式には「第一術科学校 大講堂」と呼ばれ、見学コースにも含まれる歴史的建造物のひとつです。
歴史ある石造建築(1917年築)
大講堂は、大正6年(1917年)に建設された重厚な石造りの建物で、旧海軍の時代から入校式や卒業式などの重要な式典が執り行われてきました。
建物の外壁には、地元瀬戸内海産の御影石(花崗岩)が使用されており、荘厳で格式ある佇まいが今もそのまま残っています。
収容人数・構造・内部の特徴


- 広さ:約500坪(約1,650㎡)
- 収容人数:約2,000人という大規模ホール
- 天井はドーム型の吹き抜け構造で、音の響きが美しい
- 中央には、舵輪(かじわ)を模した大きなシャンデリアが吊るされており、海軍らしい意匠が随所に見られます
主賓・一般の入口の違いにも注目

- 南側の入り口は、天皇陛下や皇族の方々が使用する主賓用玄関として設けられていました
- 一方、海側(北側)は、一般の教職員や候補生の出入口として使用されていた歴史があります
格式ある作りは、今なお現役の式典会場として使用されており、幹部候補生たちの節目を見守り続けています。
平成の改修で保存性と耐久性が向上
平成期には、老朽化対策のための改修工事が行われ、外観・内観ともに創建当時の雰囲気を保ちつつリニューアルされました。
この改修により、耐震性・耐久性・保存性が向上し、今後も長く使われ続ける予定です。
所在地と施設概要
- 施設名:海上自衛隊 第1術科学校 大講堂
- 所在地:広島県江田島市江田島町 国有番地
- 施設用途:入校式、卒業式、式典、講演会など
- 築年:1917年(大正6年)
- 材質:石造(御影石/花崗岩)

大講堂は単なる古い建物ではなく、日本の海軍・自衛隊の歴史を今に伝える重要な文化資産です。
見学の際には、ぜひ細部にも注目してその重みと美しさを体感してみてください。
■ 幹部候補生学校舎(旧海軍兵学校生徒館)|明治建築の粋を集めた赤煉瓦の名建築

江田島にある「海上自衛隊幹部候補生学校」。その中心的な建物が、「幹部候補生学校舎(旧海軍兵学校生徒館)」です。
1893年(明治26年)に完成し、現在も幹部候補生たちが学ぶ教育の中心施設として使われている、歴史的・建築的価値の高い建築物です。
設計者はイギリス人建築家ジョン・ダイアック

この校舎は、イギリス人建築家ジョン・ダイアック氏の設計によって建てられました。
明治政府が西洋の最先端技術を取り入れていた時代、ダイアック氏は日本における赤煉瓦建築の先駆者とも言われています。
竣工は1893年(明治26年)で、建設から130年近く経った今も現役で使用されている建物です。
高品質な煉瓦と「イギリス積み」による構造美

- 構造:レンガ造り・2階建て
- 使用素材:イギリスから輸入された高品質な煉瓦
- 煉瓦積法:「イギリス積み」(縦横の煉瓦を交互に積み上げ、耐久性と美しさを両立)
特に注目すべきは、120年以上経過してもなお退色せず残る赤煉瓦の美しさと、職人の技が光るレンガ積みの精度。
この校舎は、現在も「県内最高級のレンガ建築」として高く評価されています。
デザインと構造の見どころ

- 全長:140メートルを超える大規模建築
- 内部:100メートル以上の開放的な廊下
- 中庭:桜の木が植えられ、四季の風情が感じられる設計
さらに、建物正面の玄関の床板には、かつての戦艦「金剛(こんごう)」のチーク材の甲板が再利用されており、軍艦の歴史を引き継ぐ演出にも注目です。
紋章に込められた歴史の象徴性
- かつて掲げられていたのは、天皇・皇室を象徴する「菊の御紋章」
- 現在は、海上自衛隊のシンボル「桜と錨の紋章」が掲げられています
時代とともに変化しながらも、誇りと伝統の象徴としての役割は変わっていません。
保存と活用|創建当初の美を残しつつ現役運用中

2002年(平成14年)からは大規模な修復事業が行われ、創建時の意匠を忠実に残しながら、耐震性や設備面の強化も図られました。
現在でも、海上自衛隊幹部候補生学校の庁舎として日常的に使用されており、一定時間に限って一般見学も可能です。
建物の配置・景観設計にも注目
校舎は、江田島湾に向かって開かれるように配置されており、他の歴史的建築群と整然と並ぶその姿はまさに圧巻。
景観・軸線・視線誘導を意識した配置計画は、当時としては革新的で、建築美だけでなく都市計画的な視点からも高く評価されています。
基本データ|幹部候補生学校舎
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | 幹部候補生学校舎(旧海軍兵学校生徒館) |
竣工年 | 1893年(明治26年) |
設計者 | ジョン・ダイアック(英国人建築家) |
構造 | 煉瓦造2階建て(イギリス積み) |
全長 | 約140メートル |
特徴 | 高品質煉瓦使用/床に戦艦「金剛」のチーク材/廊下・中庭設計/紋章の変遷 |
所在地 | 広島県江田島市江田島町 国有番地 |
現在の用途 | 海上自衛隊幹部候補生学校の庁舎・一般見学も可 |

このように幹部候補生学校舎は、単なる古建築ではなく、旧海軍から現代の海上自衛隊へと続く「教育と伝統の象徴」でもあります。
見学の際には、その精緻なレンガ積み・意匠の美・歴史的背景にぜひ注目してみてください。
■ 教育参考館(旧海軍兵学校記念館)|歴史と精神を受け継ぐ知の殿堂

海上自衛隊幹部候補生学校を訪れるなら、必ず立ち寄りたいのが「教育参考館(旧・海軍兵学校記念館)」。
壮麗なギリシャ神殿風の外観と、静謐な空気に包まれたこの施設は、単なる資料館ではなく、海軍の精神と歴史を受け継ぐ学びの場です。
建物の概要|ギリシャ建築風の重厚な意匠

教育参考館は、1936年(昭和11年)に竣工した、鉄筋コンクリート造2階建ての建物です。
そのデザインは、古代ギリシャの神殿を模した列柱建築となっており、見上げるような外観は、訪れる者に畏敬の念を抱かせます。
- 構造様式:鉄筋コンクリート造、2階建て
- 建築意匠:ギリシャ神殿風(列柱・三角破風など)
この建設には、当時の海軍士官や財界人からの寄付金が多く充てられ、物心両面から海軍教育の中心として整備されました。
設立の目的|心を鍛え、知を学ぶ場所
教育参考館は単なる記念館ではなく、「先人の遺徳を偲び、精神基盤を育て、自己修養と学術研究の資とする」という明確な理念を持って設立されました。
- 精神性の継承:旧海軍の精神・価値観を現代の教育に活かす
- 自己修養の場:展示を通じて自らを省み、学び直す機会を提供
- 学術的役割:歴史研究や教育資料としての保存・活用
現在でも、海上自衛隊幹部候補生の教育の一環として使用されており、見学者にとっても静かに心を整える貴重な空間です。
展示内容|16,000点におよぶ旧海軍の貴重な資料
館内には、旧日本海軍に関する資料が約16,000点所蔵されており、その中から約1,000点が常設展示されています。
展示されているのは以下のような貴重な品々です。
- 幕末から昭和にかけての軍服・装備・旗章類
- 艦船模型・写真・文書資料
- 神風特攻隊員の遺書や遺品など、心を打つ展示も
歴史の資料でありながら、ひとつひとつに命と物語が宿る展示は、静かに見る者の心に語りかけてきます。
⛔撮影禁止|静かに向き合うための空間
教育参考館内では、館内撮影は禁止となっています。
これは、単なる観光ではなく、教育と追悼の場としての尊厳を守るためでもあります。
館内では、スマートフォンをしまい、展示と静かに向き合う時間を大切にしてください。
現在も使われる“学びの場”
教育参考館は、今なお海上自衛隊の教育施設としても現役で使用されています。
幹部候補生たちは、ここで旧海軍の歴史を学び、自己の使命や責任と向き合う時間を過ごしています。
見学者にとっても、単なる知識ではなく「精神」を受け取る場として、大きな意味を持ちます。
基本情報(教育参考館)
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | 教育参考館(旧海軍兵学校記念館) |
竣工年 | 1936年(昭和11年) |
構造 | 鉄筋コンクリート造・2階建て |
建築様式 | ギリシャ神殿風 |
所蔵資料 | 約16,000点(うち約1,000点を展示) |
主な展示 | 旧海軍資料、特攻隊遺書・遺品など |
利用目的 | 精神教育・自己修養・学術研究・教育利用 |
所在地 | 広島県江田島市江田島町 国有地内(幹部候補生学校構内) |

この教育参考館は、まさに「目で見る歴史教科書」ともいえる施設です。
静かな空間で展示をひとつひとつ見つめながら、戦争と平和、責任と誇り、人間の生き様に思いを巡らせてみてください。
■ 江田島の幹部候補生学校見学まとめ|見学体験と注意点、グルメ情報も!

今回は、祝日の11:15からの回(90分コース)で、「海上自衛隊幹部候補生学校(旧海軍兵学校)」を見学しました。
全体で15名ほどの参加者が集まり、年齢層は中学生から60代までと幅広く、一人で参加している方もいらっしゃいました。
移動手段は、車と公共交通機関が半々くらい。
マイカーでのアクセスも便利ですが、広島市内から高速船を使うルートもおすすめです。
見学時の注意点:服装には要注意!
もっとも印象的だったのは、「服装マナーを守っていない参加者が多数いた」ことです。
幹部候補生学校は、観光施設ではなく自衛官を育成する教育機関です。
そのため、短パン・サンダル・タンクトップといった軽装はNGと公式に案内されています。
実際にはカジュアルすぎる格好の方が散見され、少し残念に感じました。
これから見学に行かれる方は、「清潔感があり歩きやすい服装(スニーカーなど)」をおすすめします。
食事の選択肢に注意!お昼時をまたぐなら要計画
今回のツアーは11:15開始で、終了がちょうど13:00頃。
ちょうど昼食の時間帯に重なりますが、学校の敷地内や周辺に食事処はありません。
私は見学後、高速船で広島市内へ戻り、お好み焼きをいただきました。
時間に余裕がある方は、市内での昼食計画を立てておくと安心です。
見学施設内の便利情報
見学受付のある「レクリエーションセンター(集合場所)」には、以下の設備があります:
まとめ|歴史を学び、心を整える貴重な体験

海上自衛隊幹部候補生学校の見学は、日本の防衛の現場と伝統の重みを体感できる貴重な時間です。
制服姿の幹部候補生たちの姿や、100年以上前の歴史的建築物、展示資料の数々は、見る者に多くのことを語りかけてきます。
そして何より、見学の際には「見られている意識=敬意をもって参加する姿勢」が求められていると強く感じました。
少しの準備で、見学の質は大きく変わります。ぜひ、正しい服装・時間管理・見学マナーを守って、江田島でしかできない体験を味わってみてください。